懇談会
2024 年 5 月 25 日(土) 15:30~16:30

総会終了後引き続き、5年ぶりに完全対面での懇談会が開催され、母校、および桜蔭学園の近況について、お話をうかがった。
大学ではホームカミングデイが行われていて、大変お忙しい中、8名の先生がたが列席してくださった。齊藤由紀子桜蔭学園 理事長・校長は、当日はご公務のため欠席だったが、ご挨拶を寄せてくださった(白木副会長が代読)。

佐々木泰子 学長

コロナが落ち着いて、以前のように皆様に直接お会いできて、とても嬉しく思っている。
大学構内に「音羽館」という寮ができた。板橋の国際学生宿舎(大山寮)の課題を解決する学内の新規宿舎の完成によって、私達教職員も、安心して学生を見守ることができるようになった。74年ぶりの新規学部共創工学部の設立については、他の先生がたから皆様にご理解頂けるように、詳しくお話がある。

加藤美砂子 理事・副学長 (総務・理系女性育成・創立150周年事業担当・同窓会担当)

オンラインでは、お目にかかっていたが、このような形でご卒業生の皆様にお会いできるのは、得難い貴重な機会だとしみじみと思っている。
創立150周年記念事業については、記念事業委員会を設立し、150周年誌、150周年基金など6つの分科会を作って、着々と準備を進めている。桜蔭会会員の皆様からも多数のご寄附を賜り、感謝を申し上げる。
また、150周年を迎えることを記念して、新しい「学生歌」を制作することになり、お茶の水女子大在校生、卒業生、教職員等を対象に歌詞を公募し、選考を進めているところである。作曲は、本学名誉教授の近藤譲先生にお願いする予定である。来年11月29日に徽音堂で行われる創立150周年記念式典で初演されることになっている。また、150周年の記念シンポジウム、セミナー、イベントが2025年を中心に数多く開催されるので、足をお運びいただきたい。遠方からも気軽に参加できるように、オンラインの開催も多数用意する予定である。
2022年度には、「理系女性育成啓発研究所」を創設、理系女性育成に努めてきた。これまでの活動が認められて昨年、日産財団第6回リケジョ育成賞準グランプリを受賞した。
本年度、初めて「統合報告書」を発行。一般の方、卒業生、企業の皆様にお茶の水女子大学をよりよく理解して頂くために、「財務情報」に加えて、大学のトピックス、活動状況の情報を掲載している。ぜひ、ご高覧いただきたい

新井由紀夫 理事・副学長 (教育改革・入試改革担当)

新たに開設された共創工学部は、工学と人文学・社会科学を協働させ、新しい技術や価値を考案・創造することを目的にした新しいコンセプトの学部である。人間環境工学科と文化情報工学科の2学科で構成されている。前期の志願者倍率は3倍を目標にしていたが、2.5倍であった。文系、理系共通の学部につき、受験倍率を上げるために、卒業生のかたにも、高校や周りの方に紹介して頂きたい。
認証評価の結果については、大学のHPに掲載。
https://www.ocha.ac.jp/event/d014623.html
大学の今が、詳しくわかるので、是非ご覧いただきたい。
生成系AIについては、学生の皆さんは社会に出たらすぐに使っていかなければならないものであるので、どのように運用、対応していくか、検討しているところである。
能登半島地震にかかる災害救助法適用地域の世帯の学生に対する奨学金等について、在学生向けHPに掲載、また、入学検定料の免除についてもHPで告知を実施した。
令和6年度の取り組みの一つとして、お茶大コンピテンシー10(テン)を紹介したい。今までキャリア教育のなかで、コンピテンシー(社会で成果を上げる能力)の育成に取り組んできたが、全学的に、授業の中でも育成に努めることにした。授業の中で育成されるコンピテンシー、10項目を可視化するシステム(CASICA)を導入。これにより、学生は計画的にコンピテンシーの向上に取り組むことが可能になった。

石井クンツ昌子 理事・副学長 (研究・国際交流・男女共同参画担当) 

科研費獲得が好調で、本学は国内の大学の中でも良い成績を収めている。また科研費の採択実績の多い研究者がメンターとなり、若手研究者に効果的なアドバイスをすることで、科研費のさらなるアップを目指している。
研究力の向上のためにも、外部資金の獲得へ積極的に挑戦したいと考えている。
国際交流を推進するEDI(*)事業は、本学の学生と留学生が実践的な力をつけることを目的としており、文部科学省の「大学の世界展開力強化事業」の採択を受けて2023年度から本格的に開始した。昨年度は第1回グローバルインターンシップが開講された。これは、本学と関係のある企業様にお願いして、英語でインターンシップをして貰う新しい試みであった。学生、留学生にとって貴重な経験だったことが報告され、本年度も継続することになっている。
昨年9月に、佐々木学長と共にサンフランシスコエリアの同窓生の方々とお会いし、意見交換が行われ、有意義な時間を過ごすことができた。今後も海外に滞在する桜蔭会の皆様に、お会いするチャンスがあることを願っている。
2年前に設立されたジェンダード・イノベーション研究所 では、産学交流会を年4回開催している。今年度は、産学連携での共同研究を模索したいと考えている。
(*)E : Equity/公平性、D : Diversity/多様性、I: Inclusion/包摂性

坂元章 理事・副学長 (評価・学校教育開発支援担当 附属学校部長)

本日開催の附属小学校の運動会は、1、3、6年生、2、4、5年生に分けて2部制で実施されている。これは、コロナ対策として密をさける運動会運営であったが、今回は熱中症対策で、学年を分けた運営を行なっているとのこと。安全を重視する昨今の状況に配慮した事例のひとつであると痛感した。
正門から茗荷谷の駅までの間に大きな交差点があるが、朝の登校時に附属校の児童、生徒が道を塞いで通行人の邪魔をしていると苦情が出ていた。今までは、附属校の先生がたが交通整理をしていたが、これを「文京区シルバー人材センター」に依頼、派遣してもらうことが決まった。

赤松利恵 副学長 (広報・学術情報担当 附属図書館長)

附属図書館のサービスは、コロナ禍の前に完全に戻り、平日は8時45分から夜9時まで、土日も開館している。卒業生の皆様は、利用者カードが作成できるので、ぜひ図書館を活用して頂きたい。最近では、情報を発信するという図書館の役割がある。先生がたの研究論文を図書館のプラットフォームからいかに発信するかということに力を入れている。論文が掲載されている雑誌の高騰に加えて円安のため、論文の購読、掲載費用も高くなっているので、図書館として支援できないかといろいろ対策をとっているところである。
広報活動としては、学生アンバサダーの活動が特に受験生に評判がよく、学生ならではの視点でお茶大の魅力を広めてくれている。
2024年7月13日(土)~15日(月・祝)に学部オープンキャンパスを開催する。昨年度、対面方式に戻したところ、大変好評で来訪者が多かった。
学科等説明会の開催スケジュールは、HPに掲載。
https://www.ocha.ac.jp/event/d014623.html
最後になるが、創立150周年のサンプルで作ったポスターを持ってきたので、桜蔭会に貼っていただきたい。

太田裕治 副学長 (産学連携 イノベーション担当)

これからの学生は、就職、進学、会社を作るという3つの選択肢から卒業後の進路を選ぶことになると感じている。大学の方でも、起業支援、アントレプレナーシップに対応するような科目を作る流れがある。去年は、アントレプレナー演習として、SDGs、DX、ジェンダード・イノベーション編など10の科目を開講した。また、東京大学との共同授業のアントレプレナーシップ演習ディープテック編があるが、どれも人気がある。履修学生の増加のためにも、学生にこれらの取り組みを伝達する仕組みをいろいろ工夫しているところである。
学生指導上の発想の転換が重要であると考え、日々努力している。

福本浩一 副学長(事務総括) 

お茶大では、学生と教職員が一体となった避難訓練が行われていて、今年も4月22日に実施。今年は、1月にあった能登半島地震が記憶に新しいためか、学生の参加率が10%増加した。小石川消防署の講評として、文京区所管で、避難訓練に教職員と一緒に学生が参加している大学は聞いたことがないと、お褒めいただいた。

齊藤由紀子 桜蔭学園 理事長・校長

桜蔭会創立120周年、心よりお祝い申し上げる。本校は、大正13年(1924年)4月に4年制の女学校として創立され、本年創立100周年を迎えた。桜蔭会創設から20年後に、桜蔭女学校を創立した会員の皆様の情熱に、感謝するばかりである。4月16日に本校創立100周年記念式典、祝賀会を行い、髙﨑みどり桜蔭会会長、佐々木泰子お茶の水女子大学学長にご臨席を賜わり、温かいご祝辞を頂戴した。校地が狭いこと、生徒が運動する場所が少ないことの理由で、5年制の高等女学校に昇格することが大変だったが、大正15年(1926年)4月23日念願の5年制高等女学校に昇格したことを祝い、4月23日を創立記念日と定めている。
幸いなことに、本校の生徒達は、真摯に勉学に励んでおり、桜蔭会の先達の心に応える校風が作られていると自負している。創立100周年記念事業として、温水プール、体育館を含む校舎の建て替え工事を行い、昨年秋に竣工した。
本校西側にある宝生能楽堂を含む宝生ハイツを、東京都の特例制度を使って20階の高層マンションに建て替える計画については、長く東京都の斡旋の場で話し合いを続けてきたが進展が見られず、昨年12月で打ち切りとなった。
現在のところ、総合設計の許可がまだ出ていないので、諦めることなく、交渉を続けていきたい。


この後、短い時間であったが、質疑応答の場が設けられ、ご担当の先生がたから、丁寧にお答えいただいた。

Q 共創工学部には、本年度どのような学生が入学したか、また共創工学部が開設されて、昨年度までと比べて学内にどのような変化があったか、教えていただきたい。

A 太田裕治副学長 入学してまだ1ヶ月足らずなので、詳しいことは申し上げられないが、今までは生活科学部で応用科学系の学生を受け入れていて、入試科目は数Ⅱまでだった。それを共創工学部では数Ⅲまで拡張したので、数学がよくできる学生が増えたので、頼もしいと思っている。また、体育系かと思うくらい元気で積極性に富んだ学生が入学したという印象。

新井由紀夫 理事・副学長 文系だけれども、体の動きや音楽をデータ化することに関心があるので、舞踊・音楽教育と、なおかつデータサイエンスを融合させてみたいと話していた学生も入学している。基本的には文化情報工学科でも半数くらいの人は理系の素養があって入学しているようだが、数学に不安があっても、入学してからも学べると、お話している。高校生に向けては、共創工学部では、どういうことが勉強できるか、また研究されているかについて、パンフレットを出している。例えば、数学科の先生と歴史情報学の先生との対談、前年は、近世の歌舞伎を専門にしている先生と、音などをデータサイエンス化する研究をしている先生との対談など、コラボで研究していることを、意識的に見える形で、HPやパンフレットに掲載しているので、興味を持って見ていただきたい。高校生の方は、選抜方法も多岐に渡るので、入りやすい方法で入学していただきたい。

Q 大学時代に自分のやりたいことを探すということとは別に、今の学生はどういう就職先があるかということを非常に気にしていて、現実的である傾向があると思うが、共創工学部では、それについてはどのような指導をなさっているか?

A 太田裕治副学長 工学部は実用的な分野なので、授業の中でもいろいろな企業の方にもご協力をいただいている。3年生のインターンシップ制度に協力してくださる企業を現在のところ、7〜8社程度集めている状況である。1年生の空いている金曜日の午後に、近隣の企業、研究所等を回って、こういうところにも就職先があることを学生に理解してもらいたいと思う。基本的には製造業系が多いが、データサイエンス系もある。技術士という資格を持った卒業生を招いて体験談や、進路について話してもらうことも計画している。